-
「オキュペーション -侵略-」
注意:ネタバレ、長文オーストラリア産映画というのは、あまりみたことがない。今回、この映画がおそらくは初めてに近い。物語はオーストラリアの田舎町に突如として襲来した宇宙人の飛行編隊は、町を瞬く間に破壊し、住民を捕虜としてしまう。一方で家族と離れ離れになり、捕虜にならなかった人々は、山の中に小さな集落を作り、町に降りて物資を確保しながら宇宙人と戦い続けていた。しかし人々の戦いも長期戦に及んでくると、次第に意見の対立が激しくなっていく。そんな中、オーストラリア陸軍が生き残った人々を発見、保護して陸軍が本拠地とするキャンプへ全員が入っていく。そこで捕虜となった人々と、敵の本拠地破壊、敵の捕虜から聞き出した生物兵器作動を阻止するため、最終作戦を決行する。レビューサイトでは評判が非常に悪いこのSF映画。確かにそこまで目新しい感じはない。人々が宇宙人に襲われ、逃げるもの、捕虜になるもの、最後は軍隊が戦う。アメリカのSF映画テンプレートといっても過言ではない。だがオーストラリアという国の違いで、ここまでも違うものなのだろう。SF好きとしては宇宙人造形やCGにお金をけっこうかけているし、軍隊の描写もなかなか素晴らしいと思った。ヒロインがマントをなびかせ、スナイパーライフルを装備しているところなど、いいビジュアルだと感じた。最後の銃撃戦はそれなりに素晴らしいと思ってみていた。しかしB級映画っぽさはある。それはしかしハリウッド映画から比べればのことで、巨大資本がないとするならば、この映画は素晴らしいできだと思う。
映画観るなら<U-NEXT>
PR -
「風の名はアムネジア」
注意:ネタバレ、長文1990年公開、SFアニメ映画。同名の菊地秀行の小説を原作とする。物語は突如吹いた風。その風で世界はすべての記憶を失った。道具の使い方も、言葉さえもすべて。原始人と同じになった人類は食料を争い、暴力だけが支配した。しかし人工知能だけは動き、人の命令なく暴走していた。そんな世界を旅する青年・ワタルは、風が吹いた時にすべての記憶を失っていたが、遺伝子研究所に迷い込み、そこで知り合った言葉と記憶を失わなかった少年ジョニーによって10代の知能まで回復した。ジョニーによって言葉や物の使い方を教えてもらい、銃の扱いも習った。しかしジョニーは冬の日に亡くなり、ワタルはアメリカ大陸を当てもなくたびに出たのだった。そこで知り合ったのは、人の記憶を手を当てるだけで知ることの出来る女性屠る下さいソフィアと出会い、ロサンゼルスからニューヨークまで旅をすることになる。風の正体とは、ソフィアは何者なのか、なぜ人は誰に記憶を奪われたのか?菊地秀行原作のアニメは一時期量産されていた気がする。映画、OVAになっていた。その中でもこの映画はSF的にすごく面白く、切ない物語であった。この映画の銃やメカの描写は手書きとは思えないほどすごくリアルだ。ヴァンパイアハンターDなどもすごいと思っていたが、この作品も面白い。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「アリータ:バトル・エンジェル」
注意:ネタバレ、長文2019年公開のアメリカSFアクション映画であり、日本の 「銃夢」を原作といて制作ジェームズ・キャメロン、監督ロバート・ロドリゲスで制作された。物語は地球に巨大な空中都市があった時代。火星との戦争を経て地球上に唯一残った空中都市ザレム。その下で暮らす元ザレムのサイボーグ専門の医師イドは、廃品置き場から綺麗な顔をしたサイボーグの上半身を拾ってくる。その中には生身の脳が入っており、イドは亡くなった娘に使う予定だったボディを彼女に移植する。目覚めると彼女はすべての記憶を失っており、イドは亡き娘と同じ名前アリータと名付ける。彼女は十代の娘らしく活発に街を散策し、そこで出会ったヒューゴと友達になる。青年の目的はいつかザレムに行くことだった。しかしそのために仲間とサイボーグを襲い、部品を奪って街の権力者でモーターボールというサイボーグ同士が争う格闘スポーツを主催するベクターに部品を売って、ザレムへ連れて行くと約束をとりつけていた。やがてアリータとヒューゴは恋をして、2人でザレムに行くため、アリータは賞金稼ぎに登録したりモーターボール選手になったりするが、賞金稼ぎとして大暴れした時に敵愾心を抱いた男にハメられヒューゴは賞金首になってしまう。アリータはヒューゴを助けるため、そしてザレムにいる男を倒すために戦うことを誓う。ジェームズ・キャメロンはアバターを制作する前に、2つのプロジェクトを動かしていた。両方とも実写、CG、ゲームといった垣根を超えた融合した映像体験が目的のプロジェクトであり、それがアバターとこのアリータである。アバターは語ることもないが、映画史に残る映像体験をさせてくれる、凄い映画となり、CGと実写の融合がみれたきがした。本作もその面においては実写とCGの融合は見事である。アバター以上に実写とCGが融合した凄い映像になっている。ただ分かりづらい。顔だけが実写であとがCGとか実写とCGの顔をあわせたりしているなど、非常に分かりづらいが凄いことをしているんです。主人公の顔は特にアニメ顔になっているので一番わかり易い。実際の女優さんとは見た目が全然違うがあそこまでできるのは凄い技術だ。実写とCGの融合はもう完成している。更にその進化をアバターが見せてくれるものだと期待したい。ジェームズ・キャメロンは新技術を開発しないと映画を作らない人なので、これは間違いなく新技術の塊のような映画である。あるゲームクリエイターは「キャメロン監督の後を我々はただ歩いているだけ」と公言しているほど、この映画の技術を高く評価している。ストーリー面から見ると、漫画的である。間違いなく原作に忠実にしたのだろうが、完結まで物語を描いていないのが、次を狙っているハリウッド映画っぽくて、個人的にはすきではない。しかし引き合いに出して悪いがハリウッド版攻殻機動隊よりずっと凄い映像と、原作に敬意を払っているのを感じられた。ただ続編がるのかは分からないが、今回の映像よりも更に凄いものを期待したい。映画は映像の芸術。映像にとことんこだわってほしい。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「ゴルゴ13」
注意:ネタバレ、長文1973年公開の高倉健主演、佐藤純彌監督によるゴルゴ13では初の映像化作品である。物語は国際的犯罪組織のボスであるボアをテヘランで追っていた某国の秘密警察は、次々に姿を消していた。いつまでもこうした状況では部下を失い、さらにテヘランで逮捕したとしても、国籍を持たないボアを連行することはできないことから、秘密警察はボア殺害を計画し、世界一の殺し屋ゴルゴ13に依頼したのだった。ゴルゴはイランに入国、早速、ボアの居所を探り始める。そのころ街では20名もの女性が無差別に誘拐される事件が発生しており、ゴルゴはこの事件がボアにつながるのではないか、と追いかけ始めるが、同時に現地警察も動きはじめ、謎の東洋人が殺人事件を起こした、とゴルゴを追い始めるのだった。本作は原作者の、さいとうたかをへ東映が話を持ちかけたところ、さいとう本人はあまり映画化の話に乗り気ではなく、無理な条件を出せば諦めるだろう、と「主演は高倉健。オール海外ロケ、高倉健以外は全員外国人俳優」という無茶苦茶な条件をつけた。これを東映はなんと実現してしまい、さいとうたかをはだったらと脚本と演出まで指定した。こうして撮影開始された本作はイランとの合作映画となり、イランでオールロケ、現地の俳優を使い本当に高倉健以外外国人俳優で作られた。しかし演出面ではさいとうの意図と監督の意図がまったく違い、完成した本作にさいとうは不満を抱いていた。これに監督は「漫画は長期間かけて物語を作って面白くできるが映画は2時間の枠に収めなければならない。それなりにドラマがなければ面白くない」と主張していた。原作を知っている個人としては、たしかに映画のゴルゴはどこか原作のゴルゴと違う。それに途中で原作のゴルゴならば標的を殺害していただろう。まあこれは映画と漫画というフォーマットの違いであるから、どうしようもできないことではある。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「SF新世紀レンズマン」
注意:ネタバレ、長文1984年公開のアニメ映画であり、SF小説の金字塔を映像化した作品である。後にテレビシリーズも放送された。物語はとある銀河。ボスコーンなる悪が銀河を覆い尽くそうとしていた。銀河の平和を守る銀河パトロールは、レンズマンという戦士を使い、ボスコーンを壊滅させる情報を入手した。しかしそれを持ち帰ろうとした矢先、レンズマンは敵襲を受け、宇宙船はとある惑星へ墜落しようとしていた。主人公の青年キムは父と農業をしながら暮らし、地球へ向かう予定になっていた。ところが惑星へ落下してくる宇宙船を不時着させたことから、レンズマンの力とデータを受け継ぎ、銀河パトロールの基地へ向かう。だがそれをボスコーンは許さなかった。キムたち一行の大冒険が始まる。本作は当時、実写映画でも大作を制作する予算12億円を投じて制作され、まだ黎明期だったCGを手書きアニメと合成した映像になっている。個人的にはまだ無骨なCGと手書きアニメの映像が不思議な感覚で面白かった。それにしてもハリウッドでこの2年前に映画トロンで世界で初めてのコンピュータグラフィックが映画に使われ、それを日本でも使用した。しかもアニメの世界で。当時のアニメ業界の映像へのこだわりが伺える。ちなみにレンズマンよりもゴルゴ13が最初にCGを使った アニメだそうだ。今では当たり前になったことがこの映画のほうが斬新に見えるのは、皮肉なものである。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「宇宙人東京に現る」
1956年公開の大映特撮映画である。日本初のカラー特撮映画である。突然、天文台の望遠鏡に映った謎の光は、日本各地に光を放射して、電波障害を引き起こす。東京の人々は特別、何も感じずに日常を過ごしていた。しかし天文台の人々はそれが何なのか調べ始めた。その矢先、科学者の家族でピクニックに行った先で湖に浮かぶ女性を発見する。実はその女性は地球から見えない遠い惑星パライからやってきたパライ人が変身して人間の中に潜入した姿だった。その目的は水爆で滅びゆく地球を救うために来たのだ。そのためには原爆唯一の被爆国日本人が世界に訴えるべきだと。しかし地球には巨大隕石が接近していた。
当時の大映、しかも永田雅一社長印なのだから、日本初のカラー特撮というのも頷ける。金に物を言わせ、会社をグイグイ引っ張っていく人が作った新しい映画だ。宇宙人デザインは岡本太郎、特撮監督は後にウルトラマンシリーズに参加する的場徹。昔の特撮だから、と笑う予定で観たら、おもしろかった。この時代の大映、やっぱ好き。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「ウォッチメン アルティメットカット」
ここで何度となく本作にかんしては書いている。それはあくまで日本公開、日本発売のソフトを元にしたものであり、2009年公開直後、本国アメリカではディレクターズカット、アルティメットカットが発売されていたが、日本では発売されることはなかった。しかし10年の歳月を経た2019年の年末、ようやく日本でソフト化されて、日本人にも映画版ウォッチメンの真の姿を表した。物語はヒーローが実在するアメリカ。最初は警察官たちが法律外で活動するために、覆面をして自警団活動を開始したところから始まり、犯罪者たちも仮装を始めたことから、ヒーローが世界を守るようになった。中には実験の最中に素粒子分解したものの、再構築された肉体は、過去、現在、未来を見通し、素粒子を自在に操ることのできる超人になったものも居た。このことで、世界の歴史は大きく変わっていく。アメリカはヒーローによって世界を動かし、ベトナム戦争にも勝利した。しかしヒーローたちにも闇があり、次第にそれが表に出てくると、ヒーロー不要論が国内では論議され、ヒーロー禁止法までも制定されていた。そんな中で東西冷戦の真っ只中、核兵器使用が迫っていた。そして1人の男が殺される。コメディアンというヒーロー活動をしていた男で、デモの鎮圧、ベトナム戦争従軍など、ヒーローとして表向きは華々しく見える活動をしていたが、行動は粗暴で、ベトナムで妊娠させた女を銃殺。でも鎮圧では市民に銃撃。ヒーロー仲間の女性をレイプ未遂するなど、何が正義か分からない人物だった。彼の死をきっかけにロールシャッハという覆面のヒーローがヒーロー狩りが始まったと捜査を開始する。それは各ヒーローの心の闇をえぐることになっていく。アルティメットカット。3時間30分。もはや別の作品になっている。もともと作品の原作はアメコミ史上最高傑作とまで言われる名作で、昨年までスーパーマンなどの世界とつなげる大型イベントを漫画で行っていたほど、今も語られ続けるコミックだ。それを映画化したということもあり、かなり複雑なプロット。ヒーロー映画とは言い難い、生々しく描かれる人間たち。過激な暴力表現。本作はそれを更に追加したような感じになっている。途中にアニメが入り込むのだが、もはやグロテスクアニメである。しかしザック・スナイダーという監督はここまで複雑で映像的に入り組んだ作品を作っていたとは思わなかった。近年のジャスティス・リーグ議論で注目を集めている監督のいわばヒーロー映画の1つの形がここにある。それにしてもこの映画、ぜったいアルティメットカットを見るべきだ。というよりもなぜ会社側はいつもスナイダー監督の映画をカットするのか?バットマンvsスーパーマンも後にアルティメットカットが発売されたが、絶対、アルティメットカットの方が話が伝わってくる。ジャスティス・リーグなどは、スナイダー監督版は1時間30分も長いそうだ。本作よりも更に4分長いというのだから、ヒーロー映画でおそらく最長の映画になるはずだ。ウォッチメン アルティメット・カット版【Blu-ray】 [ マリン・アッカーマン ]
価格:1,100円
(2020/2/4 22:22時点)
感想(1件)
映画観るなら<U-NEXT>
-
「アビス 完全版」1989公開、ジェームズ・キャメロン監督作品である。後に完全版が制作され、現在では完全版が主流となり、公開版の入手は困難になっている。注意:ネタバレ、長文油田開発をするチームが水中基地で作業をする近くの海域で原子力潜水艦が挫傷する事故がおこる。採掘作業をするバッドたちの元に、事故処理ためにやってきたのは、コフィ率いる軍人たちと、バッドの妻で今は別居中の海洋学者リンジーだった。原子力潜水艦を調査するチームとして派遣されたリンジーたちだったが、コフィはソ連が潜水艦を破壊したと思い込み、報復を企み、搭載されていた核弾頭を持ち帰ろうとする。それを知ったバッドたちは阻止しようとするが、精神に異常をきたしたコフィは爆発させようとする。それを阻止したバッドとリンジーだったが、海中基地に戻れなくなってしまう。ジェームズ・キャメロン監督を語る上では欠かせないこのアビス。監督は海洋冒険家としても知られており、アバター撮影後、自ら世界最深部の海溝に潜水艇で潜ったときのドキュメンタリー映画も制作している。監督は子供の頃から宇宙と深海に興味があったそうだ。その1つの集大成がこのアビスなのだろう。映像的に新しいことを開発しなければ、映画を撮影しない監督だけあり、本作でも水の表現にVFXを使うなど、映像の表現を追求している。また宇宙生物の表現も素晴らしい。そしてなによりこの映画のすごいところは、水中呼吸ができる液体が登場することである。人は水中で呼吸はできない。それは酸素が人間に必要なぶんだけ水の中にないからだ。もし液体の中に人が呼吸できるだけの酸素料があれば、人は気体であれ液体であれ呼吸できるそうだ。それをこの映画は実際にやっている。しかしこの映画、個人的にすごく好きな詰め込みすぎ映画に数えられる。前半は原子力潜水艦探索の海底サスペンス物なのだが、後半は狂乱した兵士のサイコスリラー、海底のラブストーリー、原爆阻止のための自己犠牲、宇宙生物とのコンタクトと反戦メッセージと詰め込めるだけ詰め込んだ映画になっている。だからなのかあまりこの映画、思い出せないのだ、何度見ても覚えられない。それだけ濃縮されている。
映画観るなら<U-NEXT>
-
50年間、誤解され続けてきた男。私は三島由紀夫とはそういう男だと思っています。電子書籍がほとんど主体となった私個人には無縁な存在。なぜか?三島由紀夫の本は殆ど電子書籍化されることがないからです。誰かが映画を作ってもテレビでおおっぴらに宣伝はされない。テレビでは昭和の重大事件などでしか扱われない。そんな彼がようやく。50年目にしてようやく見直され始めている気がします。生前は世界で翻訳され、ノーベル文学賞の候補にまでなった。誰よりも日本を愛し、誰よりも言葉にこだわった男。もし彼が生きていたら、政治家になっていただろうか?そんなものにはならなかった。彼が言っていた日本の将来像はことごとく的を射ている。つまり正しかったわけだ。もしも彼が駐屯地であの事件を起こさなかったならば。もしも生きていたならば。そう思うとなんだか残念ではある。しかし三島由紀夫という男はきっと、あの日に死ななくてもどこかで日本の現状と未来を憂いて自殺していただろう。人の5倍は濃密な人生を生きた男。この映画は右でも左でもなく、三島由紀夫を見てほしい。 -
「リンカーン」
2012年公開のアメリカ歴史映画である。スティーブン・スピルバーグ監督制作。注意:ネタバレ、長文時代はアメリカがまだ連邦政府だった頃、北部では黒人奴隷の需要が薄まり、奴隷解放が声高に叫ばれ始めていた。しかし南部では綿花産業が盛んで人でが必要となり、安く使える奴隷制度の維持が必要となっていた。しかしこれは南北戦争のほんの1つの要因であり、様々な政治的事情から北部と南部は戦争状態に入る。戦争が始まって4年。第12代大統領、エイブラハム・リンカーンは、奴隷解放宣言をしたものの、それは戦時下での臨時的法案に過ぎず、恒久的な法律の制定をするため、議会への法改正を提案した。しかし奴隷が必要とする南部議員たちの勢力は圧倒的で、北部議員たちは劣勢にあった。また戦争が集結に近づくきこのままでは終戦と共に法案は破棄され、奴隷が再び売り買いされる時代がくる。その狭間でリンカーンは、戦争で亡くした息子たち、妻との確執、戦争の現実などを見ながら、苦労してようはく議員採決の日を迎えるのだった。アメリカ南北戦争は、どうしてもアメリカ史を学ぶ上で、奴隷解放のための戦争という簡単なくくりにされてしまうが、そこには奴隷解放はもちろんのこと、そのほかにも複雑な理由があり、北部と南部が戦争という最悪の結果に突入したのである。リンカーンはその焦点を奴隷の是非に向けさせ、さらに国内だけではなく世界の目をアメリカに向けさせることで、世界を味方につけた。私はこの映画を素晴らしいと宣言した上で、リンカーンは果たしてここまで清い人物だったのかという点について少し疑問がある。ある考察では、リンカーンは北部には解放を宣言しつつも、南部の一部には奴隷を認めていた、八方美人だったという説もある。また論点を奴隷解放に向けさせ、世界の目を引いたことで、自らに正義があるように見せた政治家でもあったのではないか、という意見もある。しかしどんな思惑にせよ、奴隷解放を実現したことは間違いではなかったし、南北戦争を終結させた貢献もある。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「アラモ」
1960年公開の「アラモ砦の戦い」を題材にしたアメリカの歴史映画である。主演のジョン・ウェインが監督もつとめている。注意:ネタバレ、長文物語の前提として本作はアメリカの歴史。テキサス州がメキシコから独立する戦争とその後、メキシコ領土であるアメリカ大陸西側を領土とし、アメリカ合衆国となったことが歴史的背景にある。なおこの映画の時点で西側の13州はイギリスから独立しアメリカ合衆国となり、中部はフランスの植民地であったがナポレオンより買い上げてアメリカとなっている。テキサスはメキシコの領土であったが、ヒューストン将軍率いる独立軍がテキサス共和国へ向けて戦闘を開始した。しかし軍備も人員もメキシコ軍の方が圧倒的に巨大で、独立軍には軍備と人員を整える時間が必要になっていた。そんな中、元は教会であったアラモ砦をメキシコ軍から手にした独立軍は、砦部隊としてウィリアム大佐をアラモ砦へ向かわせる。そこへ軍の規約に反抗的なボウイ大佐、地元では英雄で武勇伝をいくつも持ち、元は議員だったクロケット大佐が加わる。多勢のメキシコ軍を相手に、夜襲などをかけて戦況はアラモ砦守備隊に優位に見えた。しかし援軍として加わるはずだった部隊がメキシコ軍の奇襲を受けて到着できず。ヒューストン将軍の本隊が整うまでアラモ砦守備隊は時間稼ぎをしなければならなくなる。義勇軍であるクロケット、ボウイの両名部隊をウィリアム大佐は立ち去ってもいい、と命令を下すのだが誰一人として立ち去る者はなく、決戦の朝を迎えるのであった。映画で学ぶアメリカ史、ということで「パトリオット」で独立戦争を行い、イギリスから独立したアメリカは、中部をフランスから買取、領土拡大を目指す。そんな中で西側は未だメキシコ領土であり、その最前線がテキサス共和国を目指すテキサスであるわけだが、正確にはこの映画の後にテキサス共和国は誕生し、アメリカ合衆国へ統合されていくことになる。イギリスからの独立戦争の後、アメリカでは外から入植してきた者とネイティブ、つまりインディアンとの戦闘が繰り返されている。それもまたアメリカの真実だが、対外戦として見た時に、独立戦争の次はメキシコとの戦争かな、と思い本作を観た。この映画は本当にすごい。アメリカ映画がまだ力を持っていた時代だけあって、大規模な人員の動員。ダイナミックなシーンの連続が続く。西部劇の1つに数えられることも多いこの映画は、3度映画化されていて、本作しか観ていないが、本作に限った感想としては西部劇ではなく戦争映画である。誰が英雄でも、誰が悪人でもない。自由のために戦い、全滅を覚悟で砦で戦った戦士たちの物語。ジョン・ウェイン映画は実は初めてで、西部劇はイーストウッドばかり観てきたのだが、ウェインの風格はなんとも言えない雰囲気があってすごい、としか言いようがない。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「パトリオット」
2000年公開、ローランド・エメリッヒ監督、メル・ギブソン、ヒース・レジャー主演のアメリカの歴史映画である。注意:ネタバレ、長文『アメリカはここから始まった』歴史は続いているものであり、史実は区切りなく過去から現代に続くもので、物語を語る上で前提として知って置かなければならない情報がある。『7年戦争』という歴史的戦争があった。これは当時の世界列強国、植民地を抱えるイギリス、フランス、スペインとロシアなどが参戦した世界規模の戦争であった。その戦争はこうした列強同士の戦いにとどまらず、世界各地の植民地にも影響を及ぼし、アメリカでも戦闘が行われた。主人公ベンジャミンは。この『7年戦争』でアメリカを戦場とした戦闘の英雄であった。しかし妻と出会い子どもたちができて、農夫になることを決めた。それから妻は亡くなり、子どもたちを自由黒人たちと一緒に、畑を耕して生活していた。その頃、イギリスの植民地であった13州で独立の機運が高まり、フランス、スペインの支援を受け、各州は独立戦争を開始した。ベンジャミンの住む州でも独立戦争へ参加するべきだ、という意見が高まる中、戦争の恐ろしさを知っているベンジャミンは反対するが、戦争は行われることとなる。戦争へ参加することを嫌がったベンジャミンだったが、長男のガブリエルは志願兵として戦争へ参加する。次第にベンジャミンの家の近くまで戦渦が近づき、ガブリエルは負傷しながら家へ逃げ帰ってくる。それど同じく家の目の前で戦闘が起こり、ベンジャミンは中立の立場から、アメリカ、イギリス両軍の負傷兵を手当した。ところはそこへやってきたイギリスの騎馬隊隊長ウィリアム大佐は、イギリスの負傷兵を収容後、アメリカ軍の負傷兵を皆殺しにし、ベンジャミンの家に火を放ち、ガブリエルがアメリカ軍の伝令だとしると捕虜にしようとした。それを止めようとした次男をウィリアム大佐は撃ち殺し、ガブリエルは連れて行かれた。怒りと絶望からベンジャミンは武器を息子たちに持たせ、森の中へ向かい、イギリスの兵士たちを皆殺しにして、ガブリエルを助けた。そして子どもたちを亡くなった妻の姉へ預け、自らの戦場へ向かい、息子ガブリエルと民兵を集め、イギリス軍相手にゲリラ戦をしかけるのだった。ここ数日、アメリカの歴史を学び、映画でもっと深く映画の方でもアメリカ史を順番に観ていこうと思い、最初に選んだのがやはりアメリカが始まった瞬間、イギリスの植民地からアメリカ合衆国へ変わった戦争の物語であろう。わずか250年でアメリカは世界の中心国家となった。その中心国家にどうやって成り上がったのか、そこを知るべく、アメリカの始まり独立戦争からまず観たわけだが、アメリカという国は、民衆が自らイギリスから勝ち取った国である。だから愛国心が強く、独立戦争で多くの者を失った。それでも戦うことを諦めなかった。そこに今につながるものがあるように思えた。本映画はどこまでが史実でどこまでがフィクションか分からない。あるいはイギリスをここまで卑劣に描く必要はなかったのかもしれない。ただボロボロになった星条旗を掲げ、民兵がイギリス軍を倒す。アメリカは常に星条旗を掲げ戦い続けている。その歴史的始まりを観たような気がする。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「西遊記2」
チャウ・シンチー監督の「西遊記~はじまりのはじまり~」からキャストを一新し、台湾女優スー・チーだけが続投した、続編である。注意:ネタバレ、長文前作で妖怪ハンターだった主人公は、神仏を信じることで仏の道を目指し、三蔵法師と名前を改め、悟空、猪八戒、沙悟浄と共に天竺を目指し旅をしていた。しかし日銭を稼ぐために妖怪サーカスを行っては、悟空の暴走で街を破壊するなど、多難な旅を続けていた。未熟な三蔵法師も暴力で妖怪たちを従えようとしていた。そんな一行はある国へ入ると、その国の国王が三蔵法師一行に会いたいということで、王宮へ招かれる。そこで国王から無理な願い事をされ、またしても喧嘩した三蔵と悟空だったが、悟空は国王が妖怪であると見抜き、王宮で壮絶な戦いを始める。本物の国王が戻った後、三蔵に国王から贈り物として、1人の女性を紹介される。その女性は悟空が殺した三蔵の想い人と同じ踊りをするのであった。一行に加わった彼女は三蔵と悟空の関係を更に悪化させる。前作とキャストが一新したことで、若返りした感じのある三蔵法師一行。とりあえずスー・チーが出ているだけで、まだ助かった部分はある。前作でよほど利益があったと見え、悟空のアクションは壮絶さを極める。まさしく西遊記。これこそ西遊記の国が作った本物の西遊記だろう。ただ猪八戒と沙悟浄にもうちょっと活躍する場面がほしかったきがする。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「西遊記~はじまりのはじまり~」
2013年公開の中国、香港合作の西遊記を元にした映画になる。監督はチャウ・シンチー。トランスポーターでハリウッド進出した台湾女優スー・チーも出演している。注意:ネタバレ、長文物語は妖怪が溢れる中国。妖怪ハンターをする青年は、妖怪にも善の心がある、と信じて師匠が授けてくれた子守唄を聞かせて妖怪の心を鎮めようと試みていたが失敗する。そんな時、鉄の輪を自在に操る女性妖怪ハンターと出会い、命を救われる。彼女はなぜだか気の弱い主人公に惚れてしまい、つきまとうのだった。主人公はイノシシの妖怪を倒すべく妖怪の王であり、神仏に反乱を起こした悟空のところへ向かう。そこで悟空が見事にイノシシの妖怪を倒すのだったが、そこでついてきた彼女に改めて告白されるも、彼は断る。そして彼女が去った後、悟空を岩山から解放してしまい、大暴れするのだった。西遊記は日本でも香取慎吾主演でドラマ、映画となり、漫画、アニメでも新しい解釈の西遊記が登場するなど、どの時代にあっても西遊記は心をワクワクさせてくれる。個人的には教育番組の人形劇がすごく好きだった記憶がある。そんな西遊記の新しい解釈として本映画はつくられている。個人的に知っている西遊記の一行の出会いではなく、新しい西遊記一行の出会いがこの映画では描かれており、最後はおそらく映画史上に残るとんでもないスケールの映像になっていると思われる。面白く、切ない西遊記であった。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「パッセンジャー」
2016年アメリカ制作のSF映画である。注意:ネタバレ、長文物語は地球の人口が増えた未来。人類は別の惑星へ移民を計画した。巨大宇宙船に冬眠カプセルを搭載し、多数の乗客乗員を乗せて、180年の旅は自動制御で進んでいた。順調に行けば移民惑星到着4ヶ月前に全員が覚醒し、それぞれの分野のエキスパートとして、グループに別れ、開拓を始める予定だった。しかし事故が起こった。たった1人、ジムの睡眠カプセルが故障して目覚めてしまったのである。最初は皆がいると思っていたが誰も居ないことに気づき、必死に睡眠カプセルに戻ろうとしたり、ブリッジに入ろうとするが、どうすることもできなかった。90年、先に目覚めた彼は、最初は1人の生活を満喫していたが次第に自堕落になり、寂しさで自殺すら考えるようになっていく。そんな時、オーロラという女性の睡眠カプセルを見つけ、彼女に恋をする。やってはいけない。絶対にしては行けないことを彼はした。彼女の睡眠カプセルを開き、彼女を目覚めさせたのである。そして嘘をついた日常が始まり、次第に二人の中は接近していくが。一時期、広告をやたらと見て、宇宙船のデザインがすごく好きなので、見ようと思ってみれていなかった映画。SF好きとしては、この設定はよくある設定ではる。冬眠カプセルから置きたら、自分だけ。あるいは宇宙で一人ぼっち。そこに恋愛を絡めてくるのがこの映画である。映像的にはすごく面白い。よくできた映像表現である。物語としては予想通りになる。登場人物も少なく、見やすい映画ではあるが、個人的には設定が面白いだけに、なにかもう1つ、ひねりがほしかったような気もする。それにしても1年も孤独で生きていたら、あるいは主人公と同じことをしてしまうかもしれない。 -
「キングオブエジプト」
2016年公開のアメリカのファンタジーアクション映画である。注意:ネタバレ、長文物語はエジプトと呼ばれた巨大な世界。太陽神ラーは2人の息子にそれぞれの領土を与えた。オシリスには皮の辺りの都市を、セトには砂漠を。オシリスは息子ホルスに次の玉座を与えるべく、戴冠式を執り行う。そこへセトがやってくるもセトは砂漠の軍勢を引き連れ、反乱を起こし自らが全エジプトの王となる。主人公ベックは、恋人のザヤがセトの建築家の奴隷とされていたことをつきとめ、ザヤが信仰し、光る両目を失って行方不明となったホルスの為に、ホルスの目を取り返すべく、セトの塔へと侵入する。片目だけだが手に入れ、ザヤと逃げ出すも、ザヤは矢に射られて息を引きとる。ザヤを蘇らせてほしい、とホルスをみつけて頼むと、玉座をセトから取り戻しさえすれば死者を蘇らせる力を得られる、とホルスはいい、ホルスとベックはセトを倒すべく、宇宙で悪魔と戦う創造神でホルスの祖父でもある太陽神ラーに知恵を借りな向かうのだった。私の記憶ではこの映画はあまり話題にならなかったような気がする。実際にこの年の最低映画の祭典ラズベリー賞で5部門を受賞するなど、評判も良くない。しかし神や神話が好きな私としては、結構楽しめた。少なくともタイタンの戦いのような、神々が少ししか登場しない映画よりも、神は巨体で黄金の血液を流し、肉体を変化させられる、という設定は素晴らしかった。しかもエジプトという国を統べるということではなく、この世界は平らであり、その衛星軌道状をラーの船が航行し、世界を破壊する悪魔と戦っている、という設定は見事だと思った。エジプトしかない世界なのだ。個人としてはもっと神々が力を持ち、絶大でもよかった気もするが、このぐらいがきっといいのだろう。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「JOKER」
2019年制作のサスペンス映画である。ホワキン・フェニックス主演。ワーナー・ブラザースの子会社DCコミックス原作のバットマンに登場するジョーカーを主人公にした単独映画である。なお、本作は「マン・オブ・スティール」から始まった一連のユニバース世界とはまったく関係していない。注意:ネタバレ、長文「人は辛くても生きていかなければならないのか?」ゴッサムシティに住むアーサー・アフレットは心臓に持病を抱える母親と、ボロボロのアパートに暮らしていた。貧困層が深刻化したゴッサムシティでは、職探しをする人々で溢れかえり、アーサーはピエロを派遣する会社でコメディアンになる日を夢見ていた。しかし脳性麻痺の持病から突然笑い出す病気になり、精神科に入院歴もあった。それでも仕事をしているが、楽器店の看板を掲げて道端で踊る仕事で不良たちに看板を奪われ、それがアーサーのせいにされ、仲間から「身を守れ」を銃をもらうがそれを小児科病棟での仕事に持ち込み、仲間は銃のことを知らない、と言い張りついには仕事を首になってしまう。仕事場からの帰り、列車に乗っていたら証券マン3人に絡まれている女性が居た。それを見ていたアーサーは「笑いの発作」が出てしまい、その証券マンたちに絡まれ、殴られてしまう。そこで持っていた銃で3人を射殺するのだった。この事件はゴッサムの貧困層の間で英雄ピエロと賞賛されはじめた。それを隠しながら、同じアパートに暮らす黒人女性と恋に落ち、デートをする関係になる。だが確実に刑事の捜査の手は彼に伸び、母親は刑事の訪問で倒れてしまう。そして次第にアーサーが貼っていた人生の壁紙が剥がれ落ち始めるのだった。この映画が制作されると聞いた時、世の中はアベンジャーズ、ジャスティス・リーグ、アクアマンとCGを画面いっぱいに使った共有世界が主流となっていた。しかも低予算で制作されるとあり、正直、大丈夫なのかと思っていた。ところが次第に情報が出てくるに連れて、この映画はアメコミ映画としてではなく、なにか違うものになる予感がどんどん湧いてきた。公開後は日本でも話題になるほど世界中で社会現象となり、アカデミー賞にノミネートされるまで大きな作品となり、ついには利益率が歴代映画最高額となり、R指定映画として最もヒットした映画とまで上り詰めた。劇場で見ることはできなかったが、今、ブルーレイを見終わったところなのだが、この映画は予想以上にアメコミ映画としてもサスペンス映画としても優れていたことに驚いている。まずアメコミ映画としての側面から見ると、ジョーカーとはバットマンの宿敵であり「ダークナイト」が公開された当時、ヒース・レジャーのジョーカーを超えることはできない、と誰もが思っていた。だが「ダークナイト」のジョーカーはあくまでバットマンという枠組みでのジョーカーであり、コミックの世界をどうしても拭うことはできなかった。本作に関してはコミックの設定がしっかりと生かされている。後にバットマンとなるブルース・ウェインと両親の悲劇がしっかりと描かれており、それがジョーカーを起因とするところがあるのは、本当にこの映画のうまいところだと思った。そしてサスペンス映画の側面から見ても、一瞬幸せに見えたアーサーの人生が崩壊していく部分は、鳥肌が立つほど見事である。「エンゼル・ハート」のような感覚の衝撃もあり、これは本当にサスペンスとして最高の仕上がりになっている。また本作のジョーカーは殺人までもジョークにしてしまう役柄なので、コメディアンがモチーフなのだが映画の冒頭からエンディングまで、1920年代のチャップリンやキートンを意識した作りになっている。作中にもチャップリンの映画が写り込んでいる。アーサーの理想がチャップリンであるかのように差し込まれているところが、演出のすごいところだと思ってみていた。ワーナーは本作をDC映画の新レーベル第一弾として宣伝していたので、こうした単独で独特の世界観、映画オリジナルの解釈でこれからも映画を作る方針なのかもしれない。現実に「ザ・バットマン」の全キャストが先日、アナウンスされたがキャストを見る限りでは、本作のように新しい解釈でバットマンを再構築するのではないだろうか?原作ファンとしては、アメコミにはifストーリーがいくつも存在しているので、これが、というのはない。だからどんどん世界を作っていってほしいと願う。 -
「吸血鬼ノスフェラトゥ」
1922年公開のドイツ製サイレント映画であり、最初にヴァンパアを扱った映画として知られている。物語は不動産屋で働くフッターは、主の命令によってトランシルヴァニアの貴族が家を買いたいということで、その話し合いのために貴族の邸宅に向かう。だがトランシルヴァニアでは、貴族の家に向かう者を愕然の眼差しで見つめ、宿屋には「ノスフェラトゥについて」という本が置かれていた。血を吸う怪物など居るわけがない、とフッターは貴族の家に向かう。だがそこの主人は夜にしか現れず、自分の首筋に2つの傷跡があることに疑問を抱いたフッターは、ある晩、屋敷の地下室に向かう。そこには棺桶で眠る貴族の姿があった。そのまま気を失ったフッターは、翌朝、棺桶が運ばれていくのを知り、慌てて後を追う。その棺桶が通る道すがらにはペストが流行り、棺桶を乗せた船は全員が死亡する大惨事となった。その頃、フッターを待ちわびる妻は、謎の夢遊病にかかり、あの怪物の夢を見ていた。ヴァンパイア映画は個人的にすごく好きで、思春期からさんざん見てきた。B級のものから、ブラットピット、トム・クルーズ主演の「インタビューイズヴァンパイア」、アクション主体の「ブレイド」「ヴァン・ヘルシング」「アンダーワールド」など、本当に多くを見てきた。その中でもハマー・フィルムの「吸血鬼ドラキュラ」はほんとうに名作で、好きであった。本作はそうしたヴァンパイア映画の元祖であることもあって、吸血鬼はすごくデフォルメされてはいるものの、すべてのヴァンパイアものの基本となっているところが随所にみられ、本当におもしろかった。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「アエリータ」
1924年公開のソビエト連邦のサイレント映画である。今回鑑賞したのは、日本語字幕と音楽を追加したものになる。同名SF小説が原作となっている。無線技師のロッシはあるメッセージを受信する。それは火星からのものであり、火星のアエリータ姫は隣の惑星に興味をいだき、メッセージを送ったのであった。ロッシはそのメッセージを受けてから、火星のことばかり考えるようになり、妻の浮気に激高したロッシはついに妻を射殺。そのまま実験中のロケットに乗り込み、火星へ向かう。そこでアエリータと恋をするのだが。映画をさかのぼっていけば、一番最初の映画と呼べるものが、映像を記録するものであり、エジソンが開発した写真を動かす活動写真などと遡ることができるが、映画として間違いなくサイレント映画が時代の最先端を走っていた時代があった。近年そうしたサイレント映画に声を即興であてた活弁が題材になった映画もあるほど、活弁が儲かった時代もあった。映画に音声がついてから、下品だ、という人も居たが今では音のない映画など考えられない時代になっている。そんな時代だからこそ、こうしたサイレント映画が面白く見えてくる。言葉ではなく体で演技をする俳優。メイクや表情で心情を伝えなければならず、演技力というものよりも、本当に芝居の力が試されている気がする。この映画を見るとまさに芝居を見ている感覚になる。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「バッド・チャンネル」
1992年のアメリカ映画である。SF映画ではあるが、基本的にコメディたっちで物語は描かれる。ラジオ局のDJポールは、自分を鎖で縛り、暗証番号をリスナーから募集するなどの企画をしていた。そんなある日、空から謎の光が降ってくるのを見たポールは、ラジオ局が2人の宇宙人に占拠され、その放送の手伝いをさせられることになる。宇宙人の目的は女性。街に居る女性に音楽を聴かせ、目の前にロックバンドなどを見えるようにし、女を虜にして捕まえるのが目的だった。そして次々と女たちが捕まっていく。正直に申しておバカ映画である。予算がそれほどかかっているわけでもなく、宇宙人造形も当時としてはそれなりなのかな、と納得したくなるがどう見ても手抜きである。アメリカでも評判が悪く、当時の評論では『この製作者は脳みそをどこかに置いてきたみたいですね』と評されるほど酷評された。確かに内容が極めて薄い、なんともいいがたい映画である。B級なのかどうなのか分からないが、とにかくなんとか最後まで見ることのできた自分を褒めたくなる映画である。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「ミッション・スターダスト」
注意:ネタバレ、長文
1967年、イタリア、スペイン、西ドイツ制作のSF映画である。
日本でも未だに翻訳され、本国ドイツでは3000話、外伝を含めると4000話を数え、10億冊以上を売上、世界一売れている小説シリーズである「宇宙英雄ペリー・ローダン」の映画作品である。物語は東西冷戦中、世界初の月面着陸を成功させたスターダスト号は、キャプテン、ペリー・ローダンの元、月面探査を開始しようとした矢先、月面にすでに着陸している未確認の宇宙船を発見する。東側の宇宙船ではないかと疑いながらも調査にむかったペリー・ローダンたちは、それがアルコン人という、かつて銀河系を支配していた種族の宇宙船であり、白血病となった科学専門家クレストと船長トーラと出会う。クレストは知的であり話の通じる相手だったが、女性船長トーラは人間を下等な種族と見下し、高圧的な態度を取る。
しかしローダンたちは、地球にならばクレストを治せる医学があると説き伏せ、地球へと向かう。
ゴビ砂漠におりたった謎の宇宙船をめぐり、世界各国は大混乱に陥る。攻撃する軍隊も現れるも、圧倒的な科学力で攻撃を蹴散らす。
そしてクレストを治す医者を探しているさなか、トーラが誘拐される事件が発生するのだった。個人的になぜ、このシリーズが映画化されていないのか、ずっと不思議に思っている。
この映画は古く、ハリウッドが飛びついてもいいほど、原作には不自由しないのだが、やはりスペース・オペラという古びたジャンルには、映画化の話もないのかもしれない。
しかし古いとはいえ、この映画は非常に特撮もうまくできており、なんと言ってもトーラがセクシーだ。
原作では気の強い女性で、ローダンはそこに惹かれていくのだが、この女優も顔からして気が強い感じがすごく出ている。
ぜひともハリウッドがこの小説をドラマなり映画で現代に復活させてくれることを、願いたい。
日本でアニメ化でもいいかもしれない。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「新感染 ファイナル・エクスプレス」
注意:ネタバレ、長文
2016年の韓国のゾンビパニック映画である。
物語はファンドマネージャーのソグは妻とうまくいかず、別居して娘と母親と暮らしていた。
娘の誕生日、母親のところへ行くことにした。しかし忙しいソグは送っていけないと言いつつ、1人で行かせるわけにはいかず、朝早く列車に乗り母親にあずけてから昼には帰る予定であった。
しかしそれが地獄の幕開けになる。韓国各地で暴動が発生したとニュースと同時に、乗客の1人が暴れだし、乗務員にかじりついた。すると乗務員も暴れだし、乗客に噛み付く。
次第に感染が広がり、列車の中はパニックになっていく。
ソグは娘を守り、生き抜くことができるのか!韓国映画とは、私を泣かせるために作っているのか? と思えるほど最後は感動した。
パニック映画でここまで感動したのは、初めてかもしれない。しかもゾンビ映画で、ここまで泣けるとは思わなかった。
必ずゾンビ映画なのだから、犠牲者が出る。その人たちは、未来に想いを託して死んでいく。その姿がすごく良く、涙が止まらない。
ゾンビ映画でも、ここまで泣けるのは、すごいと思う。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「時間離脱者」
注意:ネタバレ、長文
2016年、韓国公開のSFスリラーである。
・物語
物語は1983年、2016年。教師のジファンと刑事のゴヌは、夢の中で互いの生活を見れるようになった。ジファンは恋人の同僚教師と近々結婚予定だったが、ゴヌが整理していた資料の中に恋人が殺される事件を発見する。
ジファンは急ぎ、彼女のところへ向かうが、恋人は殺されてしまう。
同じ頃、ゴヌは1983年で死んだジファンの恋人とそっくりの女性と出会い、食事の約束をするが、1983年に現れた連続殺人犯と同じ、ガスマスクの男が彼女を誘拐してしまう。
・感想交互に過去と未来を行き来して、殺人犯を止めようとするが、それが悪い方向へ行くと、未来にも反映されてしまう。
これぞたいタイムパラドックス物。
頭が混乱してしまうが、愛する人を守るために必死に戦う男たち。
これはSFでありながら、助かってほしいって、ヒロインの生存を望んでいる。
例え、生まれ変わっても、必ず見つけ出す。
映画観るなら<U-NEXT>
-
「レザボアドッグス」
注意 ネタバレ、長文
1992年のアメリカ映画であり、クエンティン・タランティーノ監督の長編映画デビュー作。
ヨーロッパのインディペンデント映画50で1位になるなど、今でもファンの多い映画である。物語は本名も出身地もわからないで集められ、それぞれに色の名前をつけられた6人は、小さいカフェでコーヒーを飲み雑談をしていた。名前がわかっているのは彼らを集めた裏社会の大物ジョーとその息子だけ。
彼らはジョーの立てた宝石強盗を昼に行う予定になっていた。皆がそれなりのプロであり、銃を持って強盗に押し入るため店を出る。
その後、ホワイトとオレンジが車で逃走していた。オレンジは腹部を撃たれ血まみれで、自分は死ぬんだ、と言い叫んでいた。それを落ち着かせながらホワイトは、逃走するための倉庫へ入り、オレンジを落ち着かせる。そこへピンクがやってきて、警察の動きが早すぎる。「この中に裏切り者がいる」と言い出すタランティーノを語る上で欠かせない作品が2つ「パルプ・フィクション」と本作である。
本作はもともと短編映画であったものを本作でホワイト役のハーヴェイ・カイテルが気に入り、インディペンデント映画を支援する目的から自らプロデュースする形でタランティーノへ話を持ちかけて、制作が開始された。
本作はタランティーノの映画オタクとしての知識が多く入っており、日本の「仁義なき戦い」からもインスピレーションを受けたと語っている。
派手なアクションがあるわけでもない。大掛かりな仕掛けがあるわけでもない。ほとんどが倉庫での緊迫した会話劇であり、それがなんだか音楽とマッチして心地が良い映画なのだ。
結末もギャング映画としては正しいというか、王道であり、低予算だからこそ雰囲気のある映画で、時々みたくなる一本である。
映画観るなら<U-NEXT>
-
テリー・ギリアム監督がドンキ・ホーテを完成させた。この映画は2000年公開に向けてジョニー・デップと制作していたが、撮影初日に上空を戦闘機が何度も通り、撮影できず。翌日は洪水で機材が流された。その後もトラブル続きで、断念した。それからも7度に渡って企画を動かしたが、資金難や俳優の病気などで撮影はできず、今回、ようやく完成したという。世の中にはホドロフスキー版のDUNEのように、企画段階で終わってしまった傑作が何本もあるのだろう。ホドロフスキー監督だけでいうと、ジョン・レノン、オノヨーコ主演の指輪物語。マリリン・マンソン主演のSFなど。SFで言うとさらに、ニューロマンサー、ユービックなどがある。企画はまだ動いているそうだが、保守的になりつつあるハリウッドでは、無理なのかもしれない。個人的にはハイペリオンシリーズを9部作くらいで映画化してほしい。