「THX 1138」
1971年公開のSF映画であり、制作をフランシス・フォード・コッポラ、原作、脚本、監督をジョージ・ルーカスがつとめた、ジョージ・ルーカス監督のデビュー映画である。
本作はTHX1138と呼ばれる男が鎮静剤の投与をルームメイトによって意図的に妨害され、正気に戻ることで、ルームメイトの女性と愛することを初めて覚えたことから、ロボット警察に囚われ、逃亡する物語、だと個人的には見たが、物語中に世界観の明確な説明はなく、薬とロボットで管理されたスキンヘッドで白服の集団生活をする、シェルと呼ばれる町が舞台であることが少しずつ明らかになってくる。だがほとんどの場面が説明もなく、どうしてこのような状況で人は生活しているのか、なぜ薬によって抑制されているのか、囚われた際に閉じ込められた白い空間はなんなのか、町の立入禁止区域にいる猿のような生き物はなにか。
すべてに説明がなく、究極の管理社会でありながら、完全に管理されている人物と、ある程度、自由になっている人々の違いはなにかもわからない。
ただ主人公に子供ができ、ルームメイトは幼児にまで退化させられたのか、あるいは新しく生み出されたのか、試験管の中に子供がいるシーンなどがある。
スター・ウォーズやアメリカングラフィティの前に制作した映画は、どこかキューブリックの映画のようにも見える、SFカルト映画である。
場面ごとに見る人の解釈でどんな映画にもなり得る、ある種、凄い映画だと思えた。
学生時代、この原作である映画を5分の課題でありながら20分の映画にして提出し、逆に学校側からルーカスは評価されていたらしい。
しかし商業映画としてこの映画を制作したが、ハリウッドの会社はどこも映画の意味不明さに配給を断り、唯一、受けたワーナー・ブラザースも5分をカットするなど、ルーカスはこのことからハリウッドという世界を嫌うようになり、スター・ウォーズの権利を守る、新三部作は自主映画にする、といった後のルーカスの方針を決定づけた映画になったのは確かだろう。
もしもこの映画が興行的に成功していたならば、ルーカスはカルト映画監督になっていたかもしれない。
現にルーカスは学生時代から実験的な映画を作るのが好きだったらしく、本作はその具現化といえるだろう。
引退したとはいえ、こういうカルト的な映画を最後に一本くらい作って欲しいものである。
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