「JOKER」
2019年制作のサスペンス映画である。
ホワキン・フェニックス主演。
ワーナー・ブラザースの子会社DCコミックス原作のバットマンに登場するジョーカーを主人公にした単独映画である。
なお、本作は「マン・オブ・スティール」から始まった一連のユニバース世界とはまったく関係していない。
注意:ネタバレ、長文
「人は辛くても生きていかなければならないのか?」
ゴッサムシティに住むアーサー・アフレットは心臓に持病を抱える母親と、ボロボロのアパートに暮らしていた。貧困層が深刻化したゴッサムシティでは、職探しをする人々で溢れかえり、アーサーはピエロを派遣する会社でコメディアンになる日を夢見ていた。
しかし脳性麻痺の持病から突然笑い出す病気になり、精神科に入院歴もあった。それでも仕事をしているが、楽器店の看板を掲げて道端で踊る仕事で不良たちに看板を奪われ、それがアーサーのせいにされ、仲間から「身を守れ」を銃をもらうがそれを小児科病棟での仕事に持ち込み、仲間は銃のことを知らない、と言い張りついには仕事を首になってしまう。
仕事場からの帰り、列車に乗っていたら証券マン3人に絡まれている女性が居た。それを見ていたアーサーは「笑いの発作」が出てしまい、その証券マンたちに絡まれ、殴られてしまう。そこで持っていた銃で3人を射殺するのだった。
この事件はゴッサムの貧困層の間で英雄ピエロと賞賛されはじめた。
それを隠しながら、同じアパートに暮らす黒人女性と恋に落ち、デートをする関係になる。だが確実に刑事の捜査の手は彼に伸び、母親は刑事の訪問で倒れてしまう。
そして次第にアーサーが貼っていた人生の壁紙が剥がれ落ち始めるのだった。
この映画が制作されると聞いた時、世の中はアベンジャーズ、ジャスティス・リーグ、アクアマンとCGを画面いっぱいに使った共有世界が主流となっていた。しかも低予算で制作されるとあり、正直、大丈夫なのかと思っていた。
ところが次第に情報が出てくるに連れて、この映画はアメコミ映画としてではなく、なにか違うものになる予感がどんどん湧いてきた。
公開後は日本でも話題になるほど世界中で社会現象となり、アカデミー賞にノミネートされるまで大きな作品となり、ついには利益率が歴代映画最高額となり、R指定映画として最もヒットした映画とまで上り詰めた。
劇場で見ることはできなかったが、今、ブルーレイを見終わったところなのだが、この映画は予想以上にアメコミ映画としてもサスペンス映画としても優れていたことに驚いている。
まずアメコミ映画としての側面から見ると、ジョーカーとはバットマンの宿敵であり「ダークナイト」が公開された当時、ヒース・レジャーのジョーカーを超えることはできない、と誰もが思っていた。
だが「ダークナイト」のジョーカーはあくまでバットマンという枠組みでのジョーカーであり、コミックの世界をどうしても拭うことはできなかった。
本作に関してはコミックの設定がしっかりと生かされている。後にバットマンとなるブルース・ウェインと両親の悲劇がしっかりと描かれており、それがジョーカーを起因とするところがあるのは、本当にこの映画のうまいところだと思った。
そしてサスペンス映画の側面から見ても、一瞬幸せに見えたアーサーの人生が崩壊していく部分は、鳥肌が立つほど見事である。「エンゼル・ハート」のような感覚の衝撃もあり、これは本当にサスペンスとして最高の仕上がりになっている。
また本作のジョーカーは殺人までもジョークにしてしまう役柄なので、コメディアンがモチーフなのだが映画の冒頭からエンディングまで、1920年代のチャップリンやキートンを意識した作りになっている。作中にもチャップリンの映画が写り込んでいる。
アーサーの理想がチャップリンであるかのように差し込まれているところが、演出のすごいところだと思ってみていた。
ワーナーは本作をDC映画の新レーベル第一弾として宣伝していたので、こうした単独で独特の世界観、映画オリジナルの解釈でこれからも映画を作る方針なのかもしれない。
現実に「ザ・バットマン」の全キャストが先日、アナウンスされたがキャストを見る限りでは、本作のように新しい解釈でバットマンを再構築するのではないだろうか?
原作ファンとしては、アメコミにはifストーリーがいくつも存在しているので、これが、というのはない。だからどんどん世界を作っていってほしいと願う。
PR
映画ランキング
コメント