「おろしや国酔夢譚 」
注意 ネタバレ、長文
井上靖原作の同名小説を緒形拳主演で1992年に斜陽にあった大映が制作した映画である。
物語はまだ鎖国時代の日本、大黒屋光太夫が率いる貨物船は嵐にあい難破してしまい、遭難する。船上で死ぬ者も出る中、陸地にたどり着いた一行を待ち受けていたのは、見ず知らずの民族だった。彼らはロシア帝国の島へ流されていたのである。そこで原住民に助けられながら、極寒のロシアを体験しつつ、流木を削り出しなんとか船を作り、ロシア帝国本国へと入る。が、凍傷で足を失いロシアに帰化する者などもありながら、最後の望みをかけ、大黒屋光太夫は、ロシアの女帝エカチェリーナⅡ世へ懇願し日本へ帰国する道を模索し始める。
1992年の日本映画界は冷え切っていた。そんな中で大作の大映が制作費18億円を投じ、ロシアの全面協力を受け、ロシアでのロケも行った本作。
まず鎖国時代に海外に流されたと聞いて思いつくの「ジョン万次郎」であるが、それよりも前にロシアに流され、9年半もの期間、ロシアで暮らし、ロシア語を取得した人物たちがいたことに驚き、あの寒さと異文化の中で日本に帰ることをひたすら願った人々。
この映画は狭い国、しきたりを重んじることで心を失った日本人への提言のような映画だと個人的には感じた。
作中、異国で助けてくれたのはロシア人であり、日本に帰れるように尽力してくれたのもロシア人だった。
鎖国時代の日本は外国を締め出すことしか考えておらず、史実では大黒屋を帰国後、ロシアとの政治的道具として利用しようとしたらしいことも明らかになっている。
しかし帰国した大黒屋はロシアでの経験を後世に語り継ぐべく江戸で様々な人に話しを聞かせ、蘭学の発展にも貢献した。
歴史の中に埋もれてしまうマニアックな人物かもしれない。だからこそこうして映画でしることこそが、日本人にとって大切なことなのではないだろうか?
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