「もののけ姫のエボシ」
久しぶりに「もののけ姫」を鑑賞する。宮崎駿が黒澤明との対談でいつか時代劇をやりたい、と言っていたのが形になったのがこの本作だと私は思う。
ただ時代物としては、歴史の位置づけが定かでなく、アイヌ人らしき主人公と紀伊半島らしき森の国。浅野という大名がいるということくらいしか情報がないため、冒頭の大和王朝に追われて逃げた主人公の村の先祖の話から数えると、おそらく室町時代の紀州付近が舞台だとなるそうだ。
さて、この映画は色々と謎が多い。宮崎駿はよく神やもののけを作品に登場させる。一応、「風の谷のナウシカ」の設定でも、映画には登場しないが、旧人類、という今の人類を創造した神が登場するし、ラビュタでもラビュタ人という神的な民族が居たという設定になっている。
そこからトトロやもののけ姫、千と千尋の神隠しといった、人の形をした神から自然、物体を神とするようになった。
もののけ姫も動物を神としており、シシ神という大きな神がおり、その下に狼、イノシシといった神が登場する。
エボシはタタラバにありながら、天頂様の命令でシシ神を殺す役割を担っている。ということはエボシはそもそもタタラバに来た目的は、上からの命令で神を殺すためであったとなる。そこを浅野が狙い、更にはエボシが発展させたタタラバを師匠連という謎の組織が狙っていることになる。
ある考察では、エボシは元々、とある大名あるいは公家に輿入れしたものの、夫を殺害して天頂様、つまり朝廷の周囲に近づき、公家などと親密になったものと思われるそうだ。そこで師匠連から石火矢の技術を受け、朝廷から神殺しを依頼され、石火矢衆を引き連れ、タタラバに向かったと思われる。
もののけ姫。日本の評論家が好まない、弁論大会のような主張の嵐。私は今回見てそう思った。特にアシタカの矛盾でありながら、両方を救いたいという思想めいたもの。その主張がすごかった。
当時、日本の評論家たちはこの、評論家が嫌う弁論大会映画をどう見たのだろうか?
ただやはり私は好きだ。何度見ても発見があり、何度見ても、宮崎駿の力を感じる。
これまでナウシカが一番すきな宮崎映画だったのだが、もしかするともののけ姫が一番なのかもしれない。
久しぶりに面白かったと言える映画を見た気がする。
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