第182号「バットマン」
「バットマン 1989」
テレビシリーズの映画化からしばらく映画かされていなかったバットマンを、再びスクリーンへ復活させるべくして、ワーナー・ブラザーズは当時新進気鋭の映画監督だったティム・バートンを起用した。
折しもアメリカンコミック業界全体が、シリアスな方向、リアルな方向への転換期にあり、ドラマでの明るいイメージとはかけ離れたバットマンが制作されることとなる。
主演は監督たっても希望でマイケル・キートンが抜擢され、宿敵ジョーカー役にはジャック・ニコルソンが選ばれた。バットマンと言えば、灰色のスーツに黒いパンツ。黒いマントとして世界中誰もが知っている、スーパーマンと対比的なダークヒーローである。それが時代に合致するときが来たこともあり、映画バットマンもドラマのコメディ要素は極力なくすようにして「ブルース・ウェインの中の狂気」「狂気を体現するジョーカー」を目標にしたという。これはアメコミ業界でも名作中の名作と呼ばれる「バットマンダークナイトリターンズ」の影響が大きいと思われる。それまでコミックは子供が読むもの、としていた時代に、大人に向けたバットマンとして描かれ、内なる暴力衝動を抑えられず、バットマンとして復活するブルースの姿が描かれたアメコミは、2019年の今にも多大なる影響を及ぼしている。当時、その影響を直接的に受けた映画は、まず見た目から変化した。灰色のスーツに黒いパンツは消え、全身を黒い彫刻のようなスーツになり、デザイン性を重視した、オリジナルのものへと変化した。出演者の選出に関して、マイケル・キートンは当時のコミックとあまりにもブルースとしてはかけ離れた配役に、ファンの間からは批判が起こったらしいが、公開されるとその内容とブルース・ウェインとしてのキートンの演技が素晴らしく、批判の声は消えていったという。さらにジョーカーに関しても、ドラマ版では滑稽な道下師として描かれていたが、バットマンのダークな狂気を体現する対比する者としてジャック・ニコルソンは見事に現代にも影響を与えるジョーカーを作り出した。またゴッサム・シティも、当時の世相を反映した、工業と猥雑さを兼ね備えたあれた街として作られ、独自の映画版バットマンの世界を作り出している。こうして新世代に生まれ変わったバットマンは世界中でヒット。新たなるバットマンのスタンダードとなったのだ。
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