「大脱獄」
評価:★3,7
・映画おすすめ 物語
暴力団の構成員である一郎は、仲間の剛田と銀行強盗を行う。
しかしそこで剛田は殺人事件を起こす。
しかも逮捕され起訴されたのは一郎だけであり、剛田の証言で殺人事件の犯人にされてしまう。
その頃、異母兄弟である妹が子供と一緒にひき逃げにあい、死亡するという事件まで起こってしまう。
どん底まで落ちてしまった一郎は、網走刑務所へ服役することになる。
ところがある日、彼を含む7人が脱獄に成功する。
豪雪と吹雪の中を逃げる7人だったが、追ってきた警察官に射殺されるもの、途中で別の道を行き行き倒れるものなど、数がどんどん減っていき、最後には一郎と邦造だけになってしまう。
殺人を犯した邦造と二人で雪山を逃亡中、山小屋に避難した彼らは、ネズミを喰らい飢えをしのいだ。
一郎が盗んだという銀行の大金を目当てに、どこまでもついてくるつもりだった。
それを嫌い、一郎は邦造を山小屋で殴り、その場に置き去りにするのだった。
山をようやく抜けようとした時、旅のストリッパーが動けなくなっているところに居合わせた一郎は、しかたなく彼女あきを町まで運んでいく。
町で別れるつもりだったが、脱獄のニュースを見て、夫婦を装い旅館に泊まるのだった。
そこで医者に診てもらうも、二人とも金がなく、一郎は線路の除雪の仕事を日雇いで行うことにする。
ところがそこの親方が新聞で一郎が脱走犯だと知り、賃上げで文句を言っていた一郎を黙らせようとした。
しかし逆にバールで親方と現場監督をその場で殺害する。
それを見ていた従業員は、金さえもらえれば俺はいいんだ、と言い金庫を開け一郎にも金を渡し逃げていくのだった。
金は何とかなり、旅館で本当の夫婦のようにしていた一郎とあき。
あきは一郎に抱いてほしい、とせがむも一郎はそれを断るのだった。
その後、新聞が旅館まで出回り、しかも殺人事件の捜査も始まったことで、一郎は逃げようとする。
それを手助けしたのが、旅館にいた男だった。
男は一郎にがんばれ、と言い残し自ら殺人の罪をかぶったのであった。
あきにも殺人と脱獄犯だということを知られるも、あきは警察になにも言わなかった。
二人が別れる日、一郎はあきに金と抱いてと言った日に脱いだ下着を新聞紙にくるみ、渡すのだった。
一郎はその足で札幌に戻り、元の恋人で剛田とつながっていた女のところへ向かい、剛田のところへ向かうのだった。
しかし剛田にはさらに黒幕がおり、その男がすべての計画立て、しかも列車強盗までしようとしていた。
すべての復讐をするべく剛田を追いかけていた最中、ケガをしながらも追いかけてきた邦造が現れた。
邦造は復讐のために武器を調達し、金目的と言いながらも、一郎の復讐を手伝うつもりでいた。
そして運命の列車へ二人は乗り込むのだった。
・映画おすすめ 感想
Wikipedia情報によると、この映画は本当にいろいろあった映画である。
まず東映の社長が当時若手の渡哲也が憧れの高倉健と映画を作りたい、と言ったことから動き出し、その年に渡哲也で映画を何本も作り、スターにのし上げる計画を立てた。
ところが渡哲也は体調を崩してしまい、長期入院となる。
それでも高倉健、渡哲也それに歌手として人気絶頂だった五木ひろしの三大スターで映画を作る予定であった。
しかし渡哲也の病状が意外に深刻で、ゲストてきな扱いで登場する予定で映画は進行する。
監督の石井輝男も脚本を書き、高倉健を「網走番外地」の時のようにもう一度、北海道の雪原に戻したい、という思いから進められた。
だが渡哲也の病状が絶対安静であり、医者からストップがかかったことで、渡哲也は降板することになる。
その代わりに社長の一声で菅原文太が起用されることになる。
高倉健、菅原文太、五木ひろしの三大スターで今度こそ映画は進むはずであったが、脚本が進むにつれ、映画はアクションシーンのある極寒の雪山で撮影されることになり、映画経験のない五木ひろしに負担がかかることになる。
しかも五木ひろしサイドは、演歌歌手がちょい役で出るのは嫌だ、ということもあり泣く泣く五木ひろしも降板することになった。
またヒロインの選択にも一難あり、ようやく木の実ナナに決定するなど、非常に難産な映画であった。
しかも興行的には振るわず、石井輝男監督、高倉健、菅原文太という映画界の巨人たちがそろった最後の映画であった。
余談だがこの映画の後、無理にキャスティングされた菅原文太は体調を崩し、出演するはずの映画を何本かキャンセルしている。
渡哲也の離脱も大きく、東映の社長が描いた渡哲也で一年を通して映画を作る、という企画は実現しなかった。
テレビでも渡哲也の代役に松方弘樹が登板するなどした。
企画段階からこの映画はある意味では、曰く付きだったのかもしれない。
監督 石井輝男
脚本 石井輝男
出演者
高倉健
菅原文太
音楽 青山八郎
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